Famicom版『DRAGONQUEST』研究レポート


主人公の名前によって「つよさ」が変わるしくみについての一考察

★はじめに

 堀井雄二さんのホームページの掲示板で、「主人公にどんな名前をつけているか?」ということが話題となった。
 そこで、自分の場合はこうしてますよ、と書いたあとで、「名前によって初期パラメーターが変わるとかいうのだったら これまた苦労するでしょうね。姓名判断みたいなことまでしちゃうかも??」などということを蛇足的に書いてみたのだが、その書き込みに対して、hisaoさんという人がこんな書き込みをしてくれたのだった。
「名前で初期パラメータが変化するのは ファミコンのドラクエ1だったような気がします。 確か名前で最初の、ちから、すばやさ、最大HP,最大MPが変化してその後の成長パターンもかわるみたいです。 ちなみに他のDQシリーズやSFC版ではどうだったかはわかりませんが、少なくともFC版のドラクエ1では 勇者の名前によって変化するシステムだったらしいです。」と。

なんと! 灯台もと暗しとはよくいったもので、ほかならぬ「ドラクエ1」ですでに実現されていたのであった。
ああ、恥ずかしい。こんなことでドラクエのホームページを開いていていいのか!? と自分を半ば責めながら古い資料をひもといてみたところ、ドラクエ1の名前とパラメーターとの関係についてふれてあるものがあったので、それをまとめてみることにした。


★ドラクエ1(ファミコン版)の名前のつけかた

  「ドラクエ1」というゲームは当初32K(キロビット)の予定が、制作していくうちにだんだんと内容に厚みが増していったために、521K(キロビット)まで容量をふやすことになったという。これは、当時のファミコンカセットでは最大容量だったそうだが、ディスクカードの片面に入る最大記憶容量と同じにすぎないのである。当時のソフトがいかに小さな容量をやりくりしながら作られていたかが伺える事実である。
 そのような制約の中でつくられたゲームであるため、キャラクター名は4文字、武器防具は17種類、薬草、カギは6つまで、その他のアイテムは8つまでなら持てるという制限があった。また、使用できる文字は、ひらがな全てとカタカナは20文字(イ・カ・キ・コ・シ・ス・タ・ト・ヘ・ホ・マ・ミ・ム・メ・ラ・リ・ル・レ・ロ・ン)、あとは「゛」と「−」だけであった。モンスターの名前はカタカナで表示されているものが多いが、この20文字のカタカナ以外は使えない、という制約の中で堀井さんは頭を悩ませながらモンスター名を決めていったそうである。
初期のファミコン作品は、このようにひとかたならぬ努力の末にできあがっていたのであった。
 さて、そのキャラクター名であるが、ひらがな4文字以内で命名しなくてはならない。
今、僕の手元にある古い資料にはこんな一覧表が載っていたのである。

文字
数字 10 11 12 13 14 15


 では、試みに「ありりん」という名前を入力することにしてみよう。
「ありりん」は4文字のひらがなから成っている名前である。そんなことはもったいぶらなくても誰にでもわかる。
で、その4文字を上の表に従って、数字におきかえるのである。
 すなわち、「あ」=11,「り」=2,「り」=2,「ん」=8  ということになる。
その数字を足し算するのである。ここでは、11+2+2+8=23 となる。


★パラメーターの法則性

 さて、こうして名前を数字に置き換えたら、これを「16」で割るのである。
23÷16=1・・・7  となる。これは公文式を学習するまでもなく、小学校低学年でも計算できるであろう。
 そして、第2の表を見るのである。
この表で、先に計算した余りの数字の欄を見ると、自分が名づけたキャラクターのパラメーターの値が一目瞭然となるのである。

余りの数 10 11 12 13 14 15
ちから
すばやさ
最大HP 15 15 16 16 15 15 13 13 15 15 14 14 15 15 15 15
攻撃力
守備力


 さて、それでは、「ありりん」の場合を見てみよう。勇者「ありりん」は、余りが「7」なので、「ちから4,すばやさ4,最大HP13、攻撃力4,守備力2」という、まぁ、何というか、どうってことのない勇者ということになる。ちょっとがっかりだ・・・・・。

 さて、あなたが命名した勇者の初期パラメーターはどうだろう? 満足のいく数値だっただろうか?

★おわりに

 ということで、これがDQ1の名前とパラメーターの秘密だったわけですが、きっかけを与えてくれたhisaoさんが、掲示板にこんなコメントを書き込んでくれた。
「手元にある資料で「ありりん」という名前でDQ1をすると勇者の初期パラメータがどうなるか調べてみたところ(おせっかいですね、私は)「ちから3、すばやさ4、最大HP13、最大MP5」というデータがでました。正しいかどうかわかりませんが、、、。あと成長パターンですが、すばやさとMPが成長スピードが速く、ちからとHPは遅いとのことです(間違ってたらごめんね)」

 この数値が正しければ上記の資料と若干の食い違いを見せることになる。その真偽を確かめるには、実際にファミコンで確かめてみるしかなさそうである。しかし、先日の引っ越しで、わが家にあったツインファミコンは、「燃えないゴミ」と化し、今では確かめることもできなくなってしまった。
 ちなみにゲームボーイ版DQ1では、「ちから7、すばやさ5、最大HP14,攻撃力7,守備力2」となって、設定自体が全く異なることが伺われる。

 ということで、ファミコンとドラクエ1をお持ちの方。よかったら「ありりん」の名で登録した場合、いったいどういうパラメーターとなるのか教えてください。では、ナゾを残しつつ、この項はおしまいとします。ばいばーい!(^_^)/~

★追記

 こういう終わり方では、ちょっと不本意だったのですが、まずhisaoさんが掲示板にこんなカキコをしてくれました。

ありりんさ〜ん。ごめんなさい。
うちのDQ1の資料「わ」が抜けてました。
つまり、ありりんだと23だから
23÷16で1あまり7です。


ということで、その数値は一致したので、一件落着か、と思っていたら、さらにナゾを埋めてくれるメールが届きましたので紹介しましょう。


ショーさんからのメール

はじめまして、ショーと申します。
おそらく、よしむらさんのところの「World Master Web」でちょっとお目にかかったくらいだったと記憶していますが…

で、ありりん7さんが「ドラクエ1のパラメータが変わる仕組み」について書かれていたのを拝見して思い出したことをお伝えしようと思います。

で、正直に言ってしまうと、このパラメータのパターンについては、ファミコン版ドラクエ1の公式ガイドブックにその全容が載っています。
たまたま僕がそれをもっていたので、ちょっと較べながら見ているのですが、名前を入力し数字が当てはまるのは合っているのですが、それを16で割って余りの数を出すところから微妙に違います。

ガイドブックによるとこれによって決まるのは、「ちから」「すばやさ」「最大HP」「最大MP」、それに「タイプ」です。

この「タイプ」というものが曲者で(笑)、4つのタイプがあり、

タイプ1 HP・MP優先型
タイプ2 ちから・HP優先型
タイプ3 すばやさ・MP優先型
タイプ4 ちから・すばやさ優先型

というものがあります。で、「ありりん」という名前をそれに当てはめてみると 余りが7はそのままで、初期設定値を調べると、「ちから 4」「すばやさ 4」「最大HP 13」「最大MP 4」「タイプ4(ちから・すばやさ優先型)」になるようです。

とりあえず、その一覧表を下に追記しておきます。公式ガイドブックからの引用なので間違いはないと思います。ただ、僕のチェックミスがあるかも知れませんが…

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・初期設定決定表2

余りの数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
ちから  6 4 6 4 3 4 3 4 4 4 4 4 5 4 5 4
すばやさ 6 6 4 4 3 3 4 4 4 4 4 4 5 5 4 4
最大HP 15 15 16 16 15 15 13 13 15 15 14 14 15 15 15 15
最大MP 5 7 5 7 5 4 5 4 5 5 5 5 5 6 5 6
タイプ  1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
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・成長タイプ分類表

      1 2 3 4(タイプ)
ちから   B A B A
すばやさ B B A A
最大HP  A A B B
最大MP  A B A B

(Aはパラメータの上昇が高く(成長が速く)、Bは上昇がさほどでもない(成長が遅い)の2種類に分かれています。これによって、上記の優先型がわかるというわけです。)

あとガイドブックの方にはパラメータのあがり方の早見表があるのですが、流石にそこまでは書ききれないので、機会があったらガイドブックをご覧下さい。

ということで、とりあえず、ドラクエ1のパラメータの謎はこれでだいたいはお分かりいただけると思います。おそらくファミコン版ガイドブックもまだ手に入ると思いますので、もっと詳しく知りたい場合はそちらをご覧下さいね。


ほんとになんと丁寧な方なのでしょう。感動しちゃいますね。ショーさんありがとう!
てなわけで、公式ガイドブックにはきちんとその全容が説明されていたってわけでした。
僕が持っている資料は徳間書店から発行されていた「ファミリーコンピュータ」という雑誌からの引用だったので、不十分なところがあったようです。
しかし、初期のファミコン版と最新のゲームボーイ版の比較などもできたし、14年も前につくられた「ドラゴンクエスト」のすばらしさを改めて知ることもできたのでよかったと思っています。
みなさん、ご協力ありがとうございました。